
2026年7月10日 13:07

今回は、子ども心理学科の宮田まり子先生にお話を伺いました。
女子野球に打ち込んだ学生時代のこと、保育学との出会い、現在取り組まれている研究、そして白梅学園大学への思いについて語っていただきました。
インタビュアー
子ども心理学科3年 Y.K さん
A:好きなことを思い切り楽しんでいる学生でした。
女子野球に打ち込みながら、興味を持った本をたくさん読んでいました。『学力とは何か』(国土社)という本とか。それから『夢と遊び』(岩波書店)という本も、よく野球仲間と読み込みました。「野球道」と「ベースボール」の違いを考えてみたりしながら、絶えず結果が求められる世界の中で「楽しくあること」について語り合いました。

高校までの受験に向けた学びの時間から解放されて、大学に入ってからは、自分の関心のあることに自由に時間を使えるようになりました。当時は今ほど出席が重視される時代ではなかったこともあり、教室には行きつつも、廊下で夢中になって本を読んでいるような日もあったんですよ。
大学生は、自分の好きなことを追究できる貴重な時期です。私自身、その時間をとても大切にしていました。
A:実は、戦時中には女子プロ野球があったんです。
男子のプロ野球選手が戦地へ行かれていた時代に活躍された女子選
「人生経験を積んだ人はすごいな」と、今でも印象に残っています。
A:たくさんの先生方にお世話になりましたが、その中のお一人が秋田喜代美先生です。
ある時、秋田先生から「これからは共同研究の時代だから」とお話をいただいたことがありました。
一人でできることには限界があります。だからこそ、さまざまな人の知恵を持ち寄りながら研究していくことが大切だと学びました。
現在も多くの共同研究に携わっていますが、その原点には恩師から学んだ教えがあります。
A:実は、私は大学教員を目指したことが一度もないんですよ。

保育所でも幼稚園でも認定こども園でも、教育について考えられる場所であれば働きたいと思っています。
私の根底にあるのは、「教育をより良くしたい」という思いです。
実は昔、「中学校を卒業したらすぐに社会に出たい」と考えていた時期もありました。学校よりも社会の方が複雑で面白そうだと感じていたからです。
しかし、「なぜ中卒では難しいのか」「なぜ学校という仕組みが必要なのか」と考え始めると、次々に新しい疑問が生まれてきました。
修士課程を終えても、「まだわからない、もっと知りたい」という思いが尽きず、気がつけば博士課程まで進んでいました。
今は大学という場所で研究や教育に携わっていますが、肩書きよりも、その問いを追い続けることの方が私にとって大切なのだと思います。
A:もともと、偏差値や教科の点数など、限られた評価尺度によって、その人の可能性や価値が判断されていくような学校教育のあり方に、違和感を抱いていました。
そんな中、ご縁があって保育園や幼稚園を訪れる機会がありました。そこで出会ったのは、子ども一人ひとりの違いや思いを大切にし、その子らしさが伸びていくよう支える保育者の姿でした。
私はその光景を見て、「これこそが本当の教育ではないか」と感じました。
学校教育全体が学ぶべき大切なエッセンスが保育の中にはある。その思いが、保育学の研究へ進む大きなきっかけになりました。
A:私は、一人ひとりの違いを良さとして捉え、その人らしさや可能性を引き出していくためにはどうしたらよいかを考える学問だと思っています。

一人ひとり違う個性や良さがあります。その違いを認めながら、その人らしさをどう育んでいくのかを考える学問です。もちろん、その人らしさは他者を含む環境により育まれていくものです。そのつながりを考える学問の一つともいえると思っています。
保育というと小さな子どもを対象とした学問というイメージがあるかもしれませんが、人の育ちや成長について深く考える学問でもあります。
A:共同研究を中心に、さまざまなテーマに取り組んでいます。
例えば、保育現場で使われるビールケースや雨どいなどの道具が、子どもたちの遊びや関わりにどのような影響を与えているのかを研究しています。
また、自然や資源との関わりに着目した循環保育の研究や、幼稚園・保育園の先生方と一緒に探究活動を考えるプロジェクトにも参加しています。
さらに、効率やスピードが重視される現代社会の中で、「ゆっくり学ぶことの価値」を考えるスローペダゴジーの研究にも取り組んでいます。
テーマは異なりますが、どれも子どもたちの経験や学びを豊かにすることにつながっています。
A:私は、体験を通して学ぶことを大切にしています。
本当に何かを理解するとき、頭だけで得られる知識には限界があります。実際に触れたり、見たり、匂いを感じたりしながら、「なぜだろう」と考えることで初めて学びが深まると考えています。
大学の畑を活用した授業も、その考え方から生まれました。

学生には、効率やスピードを求められる日常から少し離れ、土や植物、生き物とゆっくり向き合ってほしいと思っています。
時には「虫が苦手」「土に触りたくない」と感じることもあるでしょう。しかし、そのような感情も含めて、自分とは異なる存在と出会い、理解しようとする経験そのものが学びになるのです。

A:休みだったら海に行きたいですね。最近、休みがないので行けてないのが残念ですが。どんなことをするかっていったら、ずっと海を見てるんです。
ずっと座って海を眺めてますね。はいはい、ほう、って思いながら。
A:「何をなすべきかの前に、何であるべきかをまず考えよ」という言葉を大切にしています。
この言葉は、私の父親が教えてくれたものです。
もともとは新渡戸稲造の言葉ですが、東京大学に初めて教育学部を設立し総長も務められた南原繁という方が、これからの時代を担う若者たちに向けて常に語りかけていた言葉でもあります。
父がその歴史をまとめるパンフレットを作っており、そこに掲載されていたこの言葉に出会いました。私自身、まだまだこの言葉の持つ深い意味のすべてを分かりきれているわけではありませんが、行動を起こす前に、そして成果や評価ばかりに気を取られるのではなく、まず自分自身のあり方や本質を問い直すことの大切さを教えてくれる、素晴らしい言葉だと思っていつも心に留めています。
A:まずは、楽しんできてほしいと思います。

もちろん大変だと感じる場面もあるかもしれません。しかし、その経験は後から振り返ると必ず自分の力になります。
途中で「自分には向いていないかもしれない」と立ち止まってしまうのはもったいないことです。深い振り返りは、実習が終わった後にいくらでもできますからね。
まずは目の前の子どもたちや先生方の声に耳を傾け、自信を持って走り切ってみてください。
大変だった経験も、将来の大切な財産になります。
A:白梅の魅力は、「やってみたい」と思ったことが実現しやすいことです。
大きな大学では、新しいことを始めようとすると、多くの部署との調整やさまざまな手続きが必要になることがあります。それはそれで大切なことですが、白梅は良い意味でコンパクトな大学です。
「こんなことをやってみたい」と相談すると、「面白そうだね」と背中を押してくれる人がたくさんいます。大学の畑やピザ窯、ビオトープなども、そうした環境だからこそ実現できたものです。
また、教職員も学生も距離が近く、温かい人が多いことも白梅の魅力だと思います。自分の思いを受け止め、一緒に形にしてくれる仲間がいることは、とても恵まれた環境だと感じています。
A:私が感じる白梅生の魅力は、人との距離の近さです。
学生と教員の距離も近く、授業やゼミだけでなく、日常の何気ない場面でも自然と会話が生まれます。また、学生同士もお互いを気にかけながら過ごしている姿をよく目にします。
困っている人がいたら声を掛けたり、誰かの挑戦を応援したりする。そんな温かな雰囲気は白梅ならではの魅力ではないでしょうか。

A:近年は、保育や教育の現場に関する大変なニュースが取り上げられることも多くあります。もちろん課題がないわけではありません。
しかし実際の現場には、それ以上にたくさんの喜びや感動があります。昨日までできなかったことができるようになり、それがその子の満足や自信につながっていくプロセスを共に過ごせることや、予想もしなかった子どもの発見に出会えることは、保育という仕事ならではの大きな魅力だと思います。
また、大学という場所には、自分とは異なる価値観や背景を持つ人たちとの出会いがあります。多様な人と出会い、たくさん対話をしてほしいと思います。
違いを恐れるのではなく、違いを楽しめる人になってほしい。
白梅には、そのための出会いや学びがあります。ぜひ4年間でさまざまなことに挑戦し、自分らしい学びを見つけてください。
今回のインタビューを通して、宮田先生が「教育とは何か」「人が学ぶとはどういうことか」という問いを、学生時代からずっと大切にし続けてこられたことを強く感じました。

先生の語るひとつひとつのエピソードには、子どもや学生の「違い」を尊重し、その人らしさを伸ばそうとする考えがあり、私自身も保育の学びについて改めて考えさせられました。
特に印象に残ったのは、畑での実践や「スローペダゴジー」のお話です。効率やスピードが求められがちな現代で、あえて「ゆっくりと向き合う時間」を大切にする姿勢は、大学生活を送る私にとっても大きな気づきになりました。
自然や生き物との関わりを通して、自分の感覚や価値観を見つめ直す経験は、子どもだけでなく大人にとっても必要なのだと感じました。
また、先生が高校生へ向けて語ってくださった「違いを楽しむ」というメッセージは、これから実習に向かう私自身にとっても心強い言葉でした。
実習では不安や緊張もありますが、まずは目の前の子どもたちと向き合い、全力で楽しむことを大切にしたいと思います。
※肩書・所属はインタビュー当時のものです。
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