
2026年4月24日 10:32

今回は、白梅学園短期大学 保育科で「言葉・表現教育」を専門とする佐藤厚先生にお話を伺いました。
演劇教育から言葉の世界へ、そして保育の現場へ――。
少し意外にも思えるその歩みの中には、「人と関わること」そのものを問い続けてきた先生ならではの視点があります。
表現の楽しさと難しさ、失敗を恐れず挑戦することの大切さ、そして学生への温かなメッセージを語っていただきました。
インタビュアー
発達臨床学科4年 A.N さん
子ども学科4年 Y.T さん

A:もともと大学では、経済系を学びながら、演劇教育にも関心を深めていました。演劇は、言葉と体が切り離せない世界です。 その中で次第に、「言葉そのもの」に強い関心を持つようになりました。

大学を卒業してすぐは、実は保険会社で2年ほど営業の仕事をしていました。目に見えにくい保険という商品を扱う仕事だったので、「言葉をどう使うか」について徹底的に鍛えられました。幼稚園に営業に行った際、園長先生を待っている間、紺のスーツが真っ白になるまで子どもたちと遊んでいました。
その様子を見た園長先生から「子どもは、あなたが好きですよ」と言われたことがあります。その一言が、大きな転機になりました。「ああ、自分は教育の世界に行った方がいいのだな」と、はっきり気づいた瞬間でした。
その後、営業の仕事をしていても、子どもたちと遊んだことがすごく印象的だったので、子どもの表現教育への想いが強くなって、元々大学の恩師の岡田陽先生に相談したら「戻っておいでよ」と言われ、思い切って大学に戻りました。戻った大学では、乳幼児の言葉や演劇表現を合致させた教育を学びました。

卒業後は劇団ひまわりに入りました。俳優志望ではなく俳優(特に子役)を養成する側です。岡田先生が夏期の2週間だけ教え子を集めて、沖縄から北海道まで子どもたちのための演劇巡回公演(当時の厚生省 児童健全育成推進財団の事業)をされていました。私は演劇の経験もなかったのですが、5年間夏だけ子どもたちの参加型演劇舞台に立ちました。その頃から、子どもたちが想像する言葉は成長過程の様々な場面で大切だと気づき、劇団を20年ほど勤めた後、大学での研究に活かそうと思ったんです。
教育にしても社会で働くにしても、言葉が全てベースにあります。点字や手話などもありますが、言葉の話せない方に対してはどういうアクションをするのか、身体表現のボディランゲージや表情などもすべて言語表現の領域に入ってくるので、学びの中で大事なことかなと思っています。
A:この春(編集注:2026年4月)で5年目になります。
それまでは長野の短期大学で、児童文化や演劇教育を専門に教えていました。
昔から「保育の東大」と言われている、伝統と実績のある白梅で、教員として学べるのが本望だなと思っていたので運よく入れて良かったと思っています。
A:一番大切にしているのは、表現の「楽しさ」と「難しさ」の両方を経験することです。
自己表現は簡単そうに見えて、実はとても難しい。でも、その試行錯誤こそが、将来子どもたちと向き合うときに必ず活きてきます。
言葉遊びや表現系の授業が多いので、ありのままを感じたことを表現して楽しんでもらいたいです。それが子どもたちと出会った時に、自分もこうだったなということを繋げて考えてもらえたらいいですね。技術的なことも修得してほしいですが、子どもと楽しめることが大切だと思っています。

例えば、落語や漫才でも学びがあると思います。人に何か話す時の、目に見えない「間」や「距離感」を感じて大事にしていくと良いのかなと思います。
言葉や表現は、人間関係の土台です。 「どう伝えるか」だけでなく、「どう聴くか」「どう相手と間合いを取るか」。 そうしたことを、体験を通して学んでほしいですね。
A:大学時代の恩師は岡田陽先生、大学院時代は木村浩則先生です。
岡田先生からは、「遊び心がないと、演劇教育はできない」と教わりました。ただし、単にテンションを上げて楽しむという意味ではありません。「どの場面で、どう遊ぶと面白いのか」を本気で考えること。

木村先生からは、「人と人とのつながりを考えるのが演劇教育、人の感覚や想いをデータ化するのは難しいけど、瞬間瞬間を生き生きと表現しながら省察的実践家としての活動内容を探究すること」と学びました。
この姿勢は、長年継続している演劇教育、特にインプロ(即興演劇)の要素を保育や教育、そして保育者養成にどのように活かすかといった研究や今の授業づくりにも大きく影響しています。
A:ほとんど遊んでいました(笑)
玉川大学の寮(塾と呼んでいました)に4年間入っていました。朝6時起床で祈りの時間があり、門限は夜6時という、かなり厳しい環境でしたが、行事などが豊富にあり、とても楽しかったです。

4人部屋で先輩と後輩が一緒に生活する中で、 人との距離感や集団での振る舞いを自然と学んだ気がします。 塾の代表を務めた経験もあり、視野が広がりました。
A:関西のK幼稚園では、年に6回ほど研修として子どもの表現教育を行っています。 また、看護専門学校では「パフォーマンス論」という授業を担当し、 対人関係やコミュニケーションの在り方について教えています。
言葉や表現は、保育に限らず、あらゆる対人支援の現場につながっていると感じています。
A:ドライブや散歩です。
住まいは横浜といっても海まで遠い森や林が多い緑地帯(笑)なので海側の横浜までドライブして車を降りて周辺を散策したり、自宅周辺の四季折々で変化する緑地帯の散策を楽しんでいます。

あとは、パスタのペペロンチーノが好きで、色んな具材でアレンジして作ったりするんですよ。高じて、ベランダで、唐辛子を作っちゃいました。

A:「失敗を恐れない」「挨拶・笑顔」「分からなことを聞く勇気」
失敗が怖かったり、分からないことを聞くのが怖い気持ち、よく分かります。分からないことを「自分はダメだ、失敗」と思う人がけっこういるけど、そうじゃないよって伝えたいです。例えば実習中に分からないことがあったら少し勇気を出して聞いてほしい。でも、できなくてもそれを失敗と思わないでほしいな。口頭で聞けなくても、文章で質問することもできるので。ダメで元々だから、聞いてみようとする気持ちが大事だと思います。そして、当たり前のことだけど「ありがとう、ごめんなさい」「笑顔で挨拶」を心がけましょう。
あとはぜひ、「旅」をしてほしいですね。
学生時代は、お金がなかったので自転車で東京から鹿児島の久志まで旅をしました。
また、卒業した翌日には、ブラジルのアマゾンに一人旅もしました。「何とかなるだろう」という気持ちで飛び込んでみました。
遠くに行かなくても構いません。10分でも、15分の散歩でもいいんです。
また、寝る前に絵本を読む時間も、異空間に誘われる心の旅だと思います。
旅の一番の魅力は、人との出会いですね。 知らない文化や価値観に触れることが、自分の言葉や表現を豊かにしてくれます。
A: 保育を学ぶことは、「人生の出発点」を学ぶことだと思っています。
子どもが好きな人はもちろん、いろいろな人と関わりながら、自分を試してみたい人にも、ぜひ白梅に来てほしいですね。
ここでは、保育の技術だけでなく、 人と向き合う姿勢や人生観そのものを学ぶことができます。 思いきり遊んで、挑戦して、たくさん経験してください。
そのすべてが、きっと将来につながります。
いかがでしたか?
佐藤先生貴重なお話をありがとうございました✨️
今回のインタビューを通して、言葉や表現の大切さを改めて感じました。子どもたちとどう関わっていくか、どうすれば一緒に楽しめるのかを考え続けることが大事だと思いました。
また、子どもの何気ない一言にも意味があることを意識して、その背景にある思いや考えをくみ取ろうとする姿勢を大切にしたいです。さらに、失敗を恐れずに挑戦することの大切さも学び、残りの学生生活や社会に出た後にも活かしていきたいなと思います。
今回のインタビューで、佐藤先生がお話しされていた「分からないことは失敗ではない」「まずはやってみることが大切」という言葉がすごく印象に残りました。この言葉を聞いて、挑戦することの大切さについて改めて考えさせられました。
これまで私は、失敗を恐れて一歩踏み出せないこともありましたが、今回のお話を通して、いろいろなことにチャレンジしてみようと思いました。また、保育や教育の現場で大切になる言葉の使い方や距離感、間の取り方についてのお話も印象的で、これから現場に出る自分にとって大事にしていきたい学びになったと感じています。
※肩書・所属はインタビュー当時のものです。
