◆授業科目の目的◆
保育者養成校においては、子ども文化は幼児教育の教材と同義とされ、教材の効果的な活用法の指導が中心になされてきた。本授業では、子ども文化をめぐる従来の発想を離れ、子ども文化という領域が成立してきた諸条件と子ども文化を構成する諸要素について、近代的子ども観の形成過程および市場との関係から探索する。特に、1920年代、1960年代、1980年代、2000年代の子ども文化の動向に焦点をあてる。
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◆授業科目の到達目標◆
・「子ども文化」の成立の前提となる「近代的子ども観」への理解 ・「子ども文化」を構成する大人の価値観に対する相対的な検証 ・「子ども文化」をめぐる市場と子どもの関係性の分析 ・ 消費文化が与える子どもの成長・発達・生活への影響に対する洞察
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◆授業の概要(テーマ)◆
子どもを教育と保護の対象とみなす子ども観の成立は、産業の発展とともに子ども文化市場を拡大させる。近世後期をはじまりとする消費社会において、子ども向けの商品がどのように生産され普及したか、それらを子ども自身はどう享受してきたか、玩具・教材・玩具・菓子・衣服・家具・文具、さらには近年大人も子どもも区別なく魅了してきているメディアイベント・ゲーム・アニメ等から探ってみたい。
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◆授業計画と授業内容◆
1. | 近代的子ども観の萌芽 |
2. | 市場における「子ども」の発見①―近世後期― |
3. | 市場における子どもの発見②―近代― |
4. | 「児童文化」概念の成立とモダニズム |
5. | モダンキッズライフ①童心主義文学、童画、童謡の登場 |
6. | モダンキッズライフ②玩具産業の興隆 |
7. | モダンキッズライフ③教育玩具v.s.玩具教育論 |
8. | モダンキッズライフ④洋食と洋菓子の普及 |
9. | モダンキッズライフ⑤商品としての子供服の流行 |
10. | モダンキッズライフ⑥子ども用文房具、子ども部屋・家具の誕生 |
11. | モダンキッズライフ⑦動物園・水族館・遊園地など娯楽施設の展開 |
12. | メディアイベントと子ども文化、その仕掛けとからくり |
13. | 融解する子ども文化①遊びにおける仮想世界の拡張 |
14. | 融解する子ども文化②大人の趣味・嗜好の対象としての遊び |
15. | 子どもの成長・発達・生活と市場 |
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準備学習のアドバイス |
誰しも子ども時代にふれた文化には強い愛着と親近感があるがゆえに、それらの存在や遊んだ体験を無条件肯定しがちだが、本授業ではその功罪を文化社会史の観点から客観的・科学的に検証する。したがって日々の学習では、文化に対する自分の嗜好や趣味を社会的な文脈のなかで批判的に評価する姿勢や、優れた文化に対する審美眼・選択眼を養うことを意識して臨んでほしい。 |
成績評価方法と評価基準 |
出席状況と受講態度、ミニレポートおよびレポートの提出状況が総合的に評価する |