白梅学園 授業概要(シラバス)2012
サブタイトル 人間論文献講読 担当者 開講時間 授業形態 単位数
授業科目名 人間研究演習A 赤石 憲昭 前期 演習
◆授業科目の目的◆
「正義とは何か」という問題は、われわれ人間にとって重要なテーマの一つです。自分が何かをするとき、そして、他人が何かをするとき、この問題はいつもついてまわります。様々な情報や価値観が錯綜する中で、われわれは一体何を「正しい」と考えたらいいのでしょうか。哲学者たちの議論は、その大きな手がかりを与えてくれます。哲学者たちの議論に学びながら、この「正義」の問題について考えます。
◆授業科目の到達目標◆
「正義」に関する基本的な哲学的知識を習得するとともに、哲学的な思考法に習熟し、さらにそれを現実の問題に当てはめ、実践できるようになることが本授業の目標です。
◆授業の概要(テーマ)◆
NHKの教育番組で話題となり、哲学書としては異例のベストセラーとなったマイケル・サンデルの『これからの「正義」の話をしよう』をテキストに、「正義とは何か」という、われわれの日々の生活においても避けることのできない重要な問題について学習します。「哲学」というと非常に難解なイメージを持たれますが、具体的な事例をもとに、現代日本社会との連関にも留意しながら話を進めます。
◆授業計画と授業内容◆
1.オリエンテーション:正義に対する三つの哲学的立場 暴走する路面電車。五人を助けるか?一人を助けるか?
2.正義に対する第一の立場:最大多数の最大幸福  功利主義①・・・「最大多数の最大幸福」は正しいか?
3.正義に対する第一の立場:最大多数の最大幸福  功利主義②・・・「快楽の質」を区別できるか?
4.正義に対する第二の立場:自由の尊重 リバタリアニズム・・・私は私のものか?
5.正義に対する第二の立場:自由の尊重  市場原理主義・・・お金で買えるもの/買えないもの
6.正義に対する第二の立場:自由の尊重  ロックの所有論・・・この土地は誰のものか?
7.正義に対する第二の立場:自由の尊重  カントの道徳論①・・・なぜ人を使ってはいけないのか?
8.正義に対する第二の立場:自由の尊重  カントの道徳論②・・・なぜ嘘をついてはいけないのか?
9.正義に対する第二の立場:自由の尊重  ロールズの「公正としての正義」・・・公正な社会を作るには?
10.正義に対する第二の立場:自由の尊重  アファーマティブ・アクション・・・差別は本当にいけないのか?
11.正義に対する第三の立場:美徳の涵養  アリストテレスの正義論①・・・政治の目的とは何か?
12.正義に対する第三の立場:美徳の涵養  アリストテレスの正義論②・・・先祖の罪を償うべきか?
13.正義に対する第三の立場:美徳の涵養  コミュニタリアニズム①・・・愛国心と正義のどちらが大切か?
14.正義に対する第三の立場:美徳の涵養  コミュニタリアニズム②・・・「善き生」とは?
15.まとめ

準備学習のアドバイス 各回の授業内容は、基本的にテキストの各章に対応しています。あらかじめ該当箇所を読み、疑問点を明確にした上で授業に臨むようにして下さい。また、哲学は必ずしも簡単に理解できるというものではありません。理解のためには、授業後もテキストを熟読するようにして下さい。また、DVDにもなっているサンデルの講義を視聴したり、その講義録を読むのも効果的です。
成績評価方法と評価基準 平常点(受講票コメント記入)45点+期末試験55点の計100点満点で60点以上を合格とします。平常点では、各回の理解と取り組みを、試験では、「正義」に関する基本的知識(70%)とその応用能力(30%)を確認します。
テキスト マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう:現代を生き延びるための哲学』ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2011年(早川書房、2010年)
連絡先(メールアドレス) e-mail: akaishi@tokai-u.jp 
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