白梅学園 授業概要(シラバス)2010
サブタイトル 源氏物語の世界 担当者 開講時間 授業形態 単位数
授業科目名 人間研究演習A 久保木 壽子 前期 演習
◆授業科目の目的◆
 日本文化の真髄を表すものとして、源氏物語はいまや世界の人々に読まれている。1000年も昔の作品の、何が人々を引きつけるのだろうか。作品構造を読み解きながら、当代貴族社会の種々のしばり(身分制・一夫多妻制など)の中で、自らの生を選択できない女たちの苦闘する姿と心理を見ていく。「現代」という時代と、そこに生きる我々自身の「生」の輪郭を、改めて確認する作業になろう。

◆授業科目の到達目標◆
源氏物語正編の人物関係を捉える。
作品の構想について理解する。
時代設定と主題の問題について理解する。
表現の美について知る。


◆授業の概要(テーマ)◆
 膨大な物語であるから、特定の女性に注目しつつ徐々に人物関係、作品の構想への理解を深めていく。
 折々に、アニメ・映画などを折り込み、無理なく関係性を整理していきたい。また典型的場面を紹介しながら、個別の人物が抱える問題性と一夫多妻下の妻たち相互の関係性が、どう描かれるかを見ていく。
1000年前の「物語」と現代小説の違いや、読者を引きつける筆者の巧妙な操作についても触れ、古典の現代的意義について理解することとする。


◆授業計画と授業内容◆
1.紫式部とその時代について
2.全54帖の全体構造を知る:授業では正編(第1部・第2部)を扱う。
3.主題1:母喪失と少年の成長
4.主題2:女性たちの造形 ①葵の上との政略結婚・六条御息所の形象
5.            ②若紫の略奪と認知されない結婚
6.            ③藤壺女御(父帝の寵妃)強姦?と懐妊
7.            ④明石の君の忍従と妥協
8.第1部の権力構造の整理。予言の実現と源氏の栄華。
9.女性たちの主体性回復への願望はどう表現されていたか。
10.第2部の構想と意味:物語の方法の変化。
11.⑤女三の宮の降嫁と六条院(=光源氏)の衰退の意味。
12.紫の上造形とその主題的達成について考える。
13.読者を誘導する「紫式部マジック」について考える。
14.物語のリアリティと虚構の問題について考える。
15.源氏物語の先見性について考える。


◆事前・事後学習のアドバイス◆
人物関係が複雑なので、先ず誰か一人に注目してその周辺に理解を広げていくのが良い。漫画・ビデオ・アニメ等々で多少でも予備知識を得ておくと、後の理解が楽になるであろう。

◆成績評価方法と評価基準◆
授業への積極的参加と、毎回のリアクションペーパーを重視。それと定期試験時のレポートによる。

◆テ キ ス ト◆
プリントを配布

◆連絡先(メールアドレス)◆
研究室:F‐224    電子メール:kuboki@shiraume.ac.jp