白梅学園 授業概要(シラバス)2007
授業科目名 文化と人間演習 源氏物語の世界
担 当 者 久保木壽子 開講時期 後期
授業形態 演習
単 位 数
◆授業のねらい及び学習教育目標
 日本文化の真髄を表すものとして、源氏物語はいまや世界の人々に読まれている。1000年の昔の作品ながら、「現代に通じる問題」が豊かに形象されているからであろう。一体、何がこの作品の魅力なのだろうか。絵巻や漫画・ビデオなどを補助的に使いながら、作品構造を読み解き、制約の多い社会で<どう生きるか>に苦闘する女たちの姿を中心に考えていく。「現代に通じる問題」の所在を突き止めたい。

◆授 業 計 画
1,紫式部と作品の時代設定について
   作者の生涯と人物像の概容を、その歌集と日記によって見ておく。
   また物語の時代設定、舞台(場)について押さえる。
2,全54帖の全体構造を知る。
   授業で読み通す訳にはいかないが、その人物関係・主題・方法について、概容を理解したい。
3~6,登場する様々な女と光源氏の結びつきについて考える。
 光源氏は、正妻葵の上とは政略結婚、若紫とは略奪の上結婚、藤壺(父帝の寵妃)を強姦懐妊させ
  る等々、現代社会で言えば十分犯罪者として通用する。このような光源氏を正当化するべく働く物語
  の論理について考える。▼
7~10,忍従と自立をめぐる問題について考える。▼
   彼に対した女たちは何を考え、どう生きようとしていたか。物語当代の身分制と特殊な結婚制度の
  もとで、多くの女たちが忍従し妥協していく。一方、自分らしく生きたいと願う女たちは、苦闘の末
  多くが破れていく。① 明石の君・②紫の上・③浮舟 を中心に、それぞれの人物像が訴えるものを
  探っていく。
11~13,権力と人間の幸福をめぐって。
   恋愛沙汰に隠されているが、この作品は、光源氏が準太政天皇という地位に上り詰めるまでの権力
  闘争を、予言の実現という形で展開している。上り詰めた後の、無惨な光源氏の衰退までを書いてし
  まったのだが。人間にとって、いったい何が大事なことなのか、作品の主張に耳を傾けたい。
14,物語のリアリティと文化的な背景について考える。
   言うまでもなく『源氏物語』は平安時代に作られた虚構の作品である。が、光源氏を実在の人と思
  わせるような設定が随所に施されている。虚構された時代設定、モデルとされる人物、作品の舞台の
  虚実などについて調べつつ、作品のリアリティと虚構としての達成について考えたい。
15,まとめ
   源氏物語の古代性と現代性について考える。


◆成 績 評 価
 出席・毎授業時のポイントメモ・期末レポートによる

◆テ キ ス ト
 配布プリント

◆参 考 書
 授業時に紹介

◆担当教員から一言
 人物関係を捉えるまでが、がんばり所。