白梅学園 授業概要(シラバス)2007
授業科目名 脳と心
担 当 者 多喜乃亮介 開講時期 前期
授業形態 講義
単 位 数
◆授業のねらい及び学習教育目標
 私たちの心はどこから生まれてくるのだろうか。古くより議論されてきたテーマであり、今も私たちの関心事の一つと言える。人の脳に関する研究が進展した現代にあって、脳を心の座と当然視する向きもある。「脳死」を人の死として受けとめる動きも広がっている。心の問題を脳の障害として理解する研究も広く行われるようになってきた。しかし、物質である脳がどのようにして精神を生み出しているのか、その不思議について改めて問われると、果たして私たちはどれほどのことを語れるだろうか。この問題を解くことは容易なことではない。脳の働きそのものが未だ十分には解明されておらず、心や精神そのものを定義することも簡単ではないからだ。さまざまな解釈や見解が出され、本質を見誤る可能性がある問題と言えるだろう。この講義ではこの二つ不定なものを取り上げ、相互の関係を問いかけていく。脳と心の研究に至る歴史の道筋を辿り、様々な研究が展開されている現状を紹介し、実際の脳研究がどのような立場で何を明らかにしようとしているのかを学んでいく。脳研究の成果を踏まえた上で、現代に生きる私たちは自分自身をどのように見るようになるのか、各自の人間観を確立する一助となることを目標とする。

◆授 業 計 画
 1.心の座         (ギリシア時代~)
 2.霊から脳へ       (ルネサンス期)
 3.骨相学と脳       (近代の幕明け)
 4.言語野の発見      (脳と心の研究の始まり)
 5.まとめ1《言葉と脳》
 6.神経細胞と脳の成長・発達(活動電位、シナプス、伝達物質)
 7.動物実験と脳      (破壊実験、刺激実験、神経活動記録)
 8.生命中枢機能と脳    (脳幹機能と自律神経系)
 9.感覚情報と脳      (様々な感覚種と知覚の成立)
 10.運動と脳        (反射、調節、動作)
 11.まとめ2《認識の成立と脳》
 12.脳の統合的機能1    (Working Memory, 注意)
 13.脳の統合的機能2    (意志決定・報酬・感情)
 14.感情・記憶と脳     (大脳辺縁系と大脳皮質)
 15.まとめ3《脳と心》


◆成 績 評 価
 平常点と試験点

◆テ キ ス ト
 無し

◆参 考 書
 講義内容に応じて適宜指示

◆担当教員から一言
 まず知ること。そして、不十分なものが掛け合わさって混沌となる危険を孕みながらも、一つの立場から知ることができない発見を期待して学んでいこう。