白梅学園 授業概要(シラバス)2005
授業科目名 人物研究Ⅲ〔有島武郎〕  
担 当 者 栗田 廣美 開講時期 後期
授業形態 講義
単 位 数
◆授業のねらい及び学習教育目標
 「時代の中で、誠実に生きようとする」とは、どういうことか。有島武郎(ありしま・たけお、1878-1923)という人物は、「情熱の芸術家」でもあり、「革命的思想家」でもあるが、それ以前に、時代の現実を深く見つめ、「人間」を圧迫するものと闘い続けようとした「一人の人間」だ。
 資産家・大農場主の家に生まれながら、やがて、小作人に、無償で農場を解放した有島。
 自殺未遂の果てにクリスチャンになりながら、やがて「信仰」と訣別した有島。
 アメリカ留学中も「近代文明」の歪みを見つめ「新たな人間らしい文明」を求めつづけた有島。
 ロシア革命を擁護しながら、同時に、革命政権の独裁制を厳しく批判し、闘おうとした有島。
 日露戦争に反対し、朝鮮の植民地化に反対し、諸民族の自由と連帯を希求した有島。
 こうした闘いの中で孤立し、やがて、夫のある女性との激しい恋愛に命を燃やし、二人で共に自殺すること──「心中」に追い込まれていった有島。
 有島武郎の遺した日記や手紙、彼が生きた当時の札幌やアメリカ、ヨーロッパの資料、作品や評論を紹介しながら、「誠実に時代の歪みと闘い続けた人間」としての有島武郎を語りたい。
 我々は、有島の「自殺(心中)=挫折(玉砕)」を、どうしたら乗り越えることが出来るか、いかにしたら、有島の遺志を継いで「人間を圧迫するもの」と闘うことが出来るか、という問題を考えていければ、と願っている。


◆授 業 計 画
 おおむね以下のような順序(最大限進んだ場合)を予定しているが、「予定」に縛られるのではなく、可能な限り諸君との(毎回提出の「ポイント・メモ」等を利用した)意見交換を重視しつつ臨機応変に展開し、問題意識が「盛り上がって」きたら、その部分に思い切って集中する等、途中で変更することもある(例えば昨年度は「1の②」に集中し、2~3は割愛した)。
 大切なことは「知識をまんべんなく獲得する」ことではなく、「有島武郎」という「具体的人物」の研究を通して、「人間」を考えることであり、以下は、その「様々な切り口」なのだ。
  1 生い立ちと、札幌での青春
     ①「特権階級の優等生息子」から、いかに「脱出」するか。
     ②「神」と「人間」──自殺未遂とキリスト教入信
     ③「家」と「国家」──反抗と訣別
  2 アメリカ・ヨーロッパでの思想形成
     ①「アメリカ=巨大な近代文明」と「日露戦争」の重圧
     ②キリスト教からの離脱と、個性的な思想の形成
     ③中世ヨーロッパと「自由なコンミューン」への憧れ
  3 日本での闘いと挫折
     ①「日本」と「アジア」の問題  ②芸術と革命  ③恋愛と死


◆成 績 評 価
 筆記試験(ノート・プリント等、何でも参照可)。講義に基づいて書く形式。
 しっかりノートをとって、講義を聴いていれば大丈夫。出席点を加味して総合的に評価する。


◆テ キ ス ト
 用いない。必要に応じてプリントを配布する。

◆参 考 書
 高原二郎著『人と作品・有島武郎』清水書院 刊
 栗田廣美著『死と飛躍・有島武郎の青春』右文(ゆうぶん)書院 刊
 栗田廣美著『亡命・有島武郎のアメリカ』右文(ゆうぶん)書院 刊
 ──本学図書館に何冊か置いてもらう予定。近所の公立図書館にも、どしどし「リクエスト」しよう!


◆担当教員から一言
◆ 授業中の「私語・内職・よそ見」等厳禁。
◆ 「全身全霊で聞き、感じ取り、考えようとする態度」があれば大丈夫(無ければダメ)。
◎ 「板書」はほとんどしない。「黒板写し型勉強」から脱却しよう。ノートするべきポイント等は授業中に指導するから大丈夫。真面目に出席して、(僕の指摘を受けつつ)ノートをしっかり取って聞いていれば、(予備知識が全く無くても)十分、分かるはずだ。