白梅学園 授業概要(シラバス)2005
授業科目名 基礎ゼミナール  
担 当 者 中島 好伸 開講時期 前後期
授業形態 演習
単 位 数
◆授業のねらい及び学習教育目標
 問題意識を喚起し、学問研究のための問題の立て方や考え方、調査・考察の仕方や文献の読み方、発表・討論の仕方、レポートの書き方など、学習の基本となる発想法と技法を習得する。

◆授 業 計 画
 中島ゼミでは、「言葉の意味は誰が決定するのか」をテーマとし、主にマーク・トウェインの文学作品と批評を使って、研究の仕方を学んでいく。たとえば、奴隷制の時代に逃げてきた奴隷を逃がしていやることは、奴隷にとって善であるが、奴隷の主人にとっては悪となる。つまり捉え方によって意味は変化する。活字の意味は一つしかないようにしばしば受け取れるが、その意味も時と場所、方法によって変化する。常識といわれるものもこの範疇に入るだろう。そこで中島ゼミでは、社会や歴史という要素を踏まえながら言葉の意味を考え、他者に流されるのではなく自分で意味を決定していく、自分の意味を他者と比較し戦わせる、他者の意味と自分の意味を止揚する方法を考えていきたい。
 マーク・トウェインの『トム・ソーヤの冒険』『ハックルベリー・フィンの冒険』は子ども向けに簡略化されたり、映画化戯画化されたりして馴染み深いであろう。はじめは戯画化されたり漫画化された作品を観て、そこにどんな意味が隠れているか考えてみよう。ディズニーランドのトム・ソーヤーにどんなイメージが付加されているか。それを見た子供は何を思うか。次に、実際に『トム・ソーヤの冒険』と『ハックルベリー・フィンの冒険』を読んでみよう。ゼミ生一人ひとりの感想はどうなっているか、解釈はどうか。少しだけ文学史の評価をのぞいてみよう。『トム』の評価と『ハック』の評価はなぜ違うのか。特に『ハック』はアメリカ文学史上評価が高いが、どうしてだろうか。あのヘミングウェイが高く評価した『ハック』、それでも彼は42章で読むのをやめなさいと言う、なぜか。今では黒人が『ハック』を子どもたちには読ませられないと言う、なぜか。文学史上まったく評価されてこなかったストウ夫人の『アンクル・トムの小屋』の方が『ハック』よりもいいという人が出てきた、なぜか。『ハック』については膨大な量の批評論文がある。みんなどこか違うが、私たちはどれに与しようか、悩んでしまう。最後にもう一度『トム』と『ハック』を読み直し、自分たちの評価が出せるか。
 以上のように、子ども向け『トム』『ハック』から始め、トウェインの『トム』と『ハック』、文学史上の『トム』と『ハック』と『アンクル・トムの小屋』、批評史、と意味の行方を考えながら、最後に自分たちの評価までもって行きたい。もちろん最後には小論を執筆してみる。そして、過去の文学作品は現在に生きる私たちに何を語りかけてくるのか、考えてみよう。


◆成 績 評 価
 ゼミ内の発表と討論、最後の小論に出席を加味して評価する。

◆テ キ ス ト
 マーク・トウェイン『トム・ソーヤの冒険』『ハックルベリー・フィンの冒険』とハリエット・ビーチャー・ストウ『アンクル・トムの小屋』は各自で用意。その他できるだけ多くのマート・トウェインの作品を読む。批評論文についてはコピーを使用。

◆参 考 書
 ゼミ内で指示します。

◆担当教員から一言
 中島ゼミは読書が大好き人にピッタシカンカンです。