白梅学園大学/白梅学園短期大学

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2022年度入学式 学長告辞

白梅学園大学、白梅学園大学大学院、白梅学園短期大学 入学式 学長 髙田 文子

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新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。会場にお越しいただけなかったご家族の皆さまをはじめ、皆さんの今日を支えた関係者の方々に心よりお祝い申し上げます。本日の主役である皆さんを教職員がこのように同じ空間を共有しながらお迎えできたことをあらためて嬉しく思います。

皆さんの多くは、最高に楽しいはずの高校生活のうち2年間も新型コロナウイルスに席巻されて、長い間さぞかし辛い思いをしたでしょう。しかし、人間は、どのような困難のもとにあっても、工夫しながらそれを乗り越える力をもっています。みなさんの高校の先生方も何とか方策を求めて努力を重ねたでしょうし、皆さんもいくつもの制約のなかで懸命に思い出作りをしてきたのではないでしょうか。

そして今、ここ数年来、久しぶりの満開の桜のもと、新たな春を迎えて、皆さんは高等教育の扉を開けたことになります。これから、高等教育としての大学とはどのようなところなのかを少しお話ししたいと思います。

大学は、高い教養と専門的能力を培うところであり、深く真理を探究するところでもあります。人間形成を通じての社会形成が重要な役割である一方で、学問としての知見に触れて、大きく言えば人類の知的財産に貢献しようとするものです。そして、これを究めていくには、大学院のようにそれなりの時間を要します。ではここでいう学問とはどのようなことでしょうか。

古代中国の哲学書である易経の「文言伝」に「学問」という言葉の出典があります。

 

学もってこれを聚(あつ)め、問(もん)もってこれを辯(わか)ち、寛(かん)もってこれに居(お)り、仁(じん)もってこれを行う

 

つまり、「学問」とは、学び、そして書物や師に問い、自問し、為すべきことを弁別すること。そして、学んだことを会得したら、「こうでなければならない」と狭量にならず、人にも自分にも物事にも、寛容な心で思いやりをもって実行することが肝要である。

ここに示された「学問」の意味は、本学において、皆さんの専門領域となる保育学や子ども学にも深く通じるところがあります。特に、学んだことを会得したら、思いやりをもって実践するというところは、まさに実践と理論を往還し、思考を深めていく領域には欠かせないからです。

今、広く大学の学びについてお話ししましたが、次に本学に絞って一つお話しします。

本学の保育学、学部と大学院が掲げる「子ども学」へのアプローチとしての切り口のひとつとして、「子どもアドボカシー」という概念をとりあげます。これは、子どもの声を聴き権利を守るという意味で、国連子どもの権利条約の起草に影響を与えたポーランドの教育学者コルチャックの思想に「子どもの人間的価値」など多くの教示を得ています。日本では、堀正嗣という研究者が1990年代から取り組んでいます。イギリスでは「子どものマイクになること」、イタリアでは「子どもの声を運ぶこと」と説明されています。また、これを制度化したものが「子どもオンブズマン」で、本学と幼児教育で提携している国立市は、数少ないそのしくみを持っている自治体のひとつです。

子どもの声は小さくて、力が弱いために、おとなや社会に届かないばかりか、声をあげたことで報復を受けることさえあります。虐待されている子どもが声をあげられなかったり、障害などのために意見表明が困難な子どものために、主に福祉領域で子どもアドボカシーの重要性が認識されてきました。また、学校教育の領域でも、いじめや体罰、ハラスメントに苦しんでいる子ども、不登校の子どもたちのために、その気持ちを傾聴して、代わりに子どものマイクになって周囲に働きかけてくれる人がいてくれたら、子どもたちは救われるにちがいありません。保育や幼児教育、地域、家庭、医療などさまざまな領域においてそれは必要です。そして今我々は、ウクライナ侵攻により、あまりに強い衝撃から涙も言葉も出ない子どもたちの声なき声に耳を傾けなければなりません。

また、皆さんは2018年の船戸結愛ちゃんの虐待死事件を覚えているでしょうか。結愛ちゃんのノートには、次のように書かれていました。

  「もうパパとママにいわれなくても しっかりきょうよりか もっともっとあしたはできるようにするから もう おねがいゆるして ゆるしてください」

 この切実な小さな声は大人によって無視されてしまったのです。この事件は日本におけるアドボカシー制度の検討を加速化させたそうですが、苦しみぬいて亡くなった結愛ちゃんの命を救うことはできませんでした。

 本学においては、例えばこの「子どもアドボカシー」、子どもの声を聴くということ、一緒に考え行動することについて、それぞれの学科における専門性から、しかもさまざまな視点からアプローチが可能です。大学院の皆さんは、さらに高度な専門性からコミットしていくことにより、理論的構築も可能でしょう。みなさんが、本学でどのようなことを主体的に学ぶのか、イメージの参考になれば幸いです。

今日から始まる大学生活が、手ごたえのあるものになるように、ともに重ねていきましょう。あらためて教職員一同、皆さんのご入学を心より歓迎いたします。

 

学長 髙田文子 2022年4月1日

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